病院から娘達を家に送って、そのまま葬儀場に向かった。
連絡しておいた母はもう待っていた。
通夜は翌日でもいいと知らず、その日に行った。
母も葬儀場の人も今日じゃなくてもいいと教えてくれなかった。
いい歳をして知らない私も私だけど、大人になって葬儀に出るのは初めてだった。
親戚その他周りの人達
誰も亡くなったことがなかった。
葬儀場の担当者は声のトーンもほどよく、話していて心地よかった。アドバイスをもらいながら祭壇や花など一つ一つ決めた。
高いものを勧めてきたりなど全くなかった。
母とは葬儀の仕方で揉めたけど、良かれと思って言ってると絶対に引かないので、二日間寝ていない私は判断できなくて任せた。
打ち合わせを終えて、夕方の通夜までに区役所に行き、死亡届と火葬許可証を取りに行かないといけなかった。
気の利いている病院は死亡診断書と死亡届が一緒になったものをくれると葬儀社の人は教えてくれた。
残念ながら気の利いていない病院だった。
区役所はメチャクチャ混んでいて、1時間半くらいかかった。火葬許可証は特に時間がかかるらしい。
葬儀代は現金のみと言われたので、銀行にも行かなくてはいけなかった。
寝ていないし、持病の血圧の薬も2日飲んでいなかったが、その暇もなかった。
やっと家に戻って礼服に着替えていたら、母から
「もうおっさまみえてるよ!早く来なさい!」と電話があった。
夫が亡くなってすぐ夫の会社に連絡をしたので、会社の若い人達が葬儀場にすぐきて、
受付を作り、慣れた感じでテキパキと準備をしてくれていたみたいだった。
コロナ禍だし、家族葬なのでと伝えたのだけど、夫の会社を侮っていた。
そうだ、東証一部上場企業だもん。
そんな二、三人しか来ないわけない。
急遽ホールを借りた。
それにもすぐ対応してくれて、葬儀場はプロの集まりだった。
花や弔電が次々届いて、急にも関わらず100人以上の方が来てくれた。
通夜が一通り終わっても、東京や大阪、静岡や福井など転勤で各地にいる同僚の方達もかけつけてくれた。
通夜が翌日でもいいんだと教えて欲しかったな。
急なのに来てくださってありがたかった。
皆さんには「コロナ禍なのに押しかけて申し訳ありません」
と言っていただいて恐縮した。
翌日の葬儀にもちゃんと本社から執行役員の方々が参列してくださった。
たくさんの方に挨拶していただいたが、全く覚えていない。
涙も出ないし、何かの映像を見ているみたいだった。
葬儀が終わって火葬場に向かう霊柩車に私一人乗った。
二月なのに暑いくらいいい天気だった。